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ふかがわにょうぼう

深川女房

小栗 風葉

「新小説」1905(明治38)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,597 字 · 57 页

青空文庫

「いいとも! お光のことは心配しねえでも、俺が引き受けてやるから安心しな」

「お光……」

「はい……」

「お前も阿父さんを便りにして……阿父さん、お光はまだ若いから、あなたが世話してやって……」

「よし! それも承知してる、心配しねえでもいい」

「お光……」

「はい……」

「このあいだから阿父さんにも頼んどいたが、お前はまだ若いから……若い今のうちに片づくがいいよ……」

「新さん!」とお光は身を顫わして涙の中から叫んだ、「私ゃ、私ゃ、いつまでも新さんの女房でいますよ!」

乾ききった新造の目には涙が見えた。舅の新五郎も泣けば義理ある弟夫婦も泣き、一座は雇い婆に至るまで皆泣いたのである。それから間もなく、新造は息を引き取ったのであった。

*    *    *

越えて二日目、葬式は盛んに営まれて、喪主に立った若後家のお光の姿はいかに人々の哀れを引いたろう。会葬者の中には無論金之助もいたし、お仙親子も手伝いに来ていたのである。

で、葬式の済むまでは、ただワイワイと傍のやかましいのに、お光は悲しさも心細さも半ば紛らされていたのであるが、寺から還って、舅の新五郎も一まず佃の家へ帰るし、親類親内もそれぞれ退き取って独り新しい位牌に向うと、この時始めて身も世もあられぬ寂しさを覚えたのである。