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せいしんあん

清心庵

泉 鏡花

「新著月刊」1897(明治30)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,494 字 · 26 页

青空文庫

何だか私たちああんまりな御様子に呆れッちまって、ぼんやりしたの、こりゃあまあ魅まれてでもいないかしらと思った位だわ。

いきなり後からお背を推して、お手を引張ってというわけにもゆかないのでね、まあ、御挨拶半分に、お邸はアノ通り、御身分は申すまでもございません。お実家には親御様お両方ともお達者なり、姑御と申すはなし、小姑一人ございますか。旦那様は御存じでもございましょう。そうかといって御気分がお悪いでもなく、何が御不足で、尼になんぞなろうと思し召すのでございますと、お仲さんと二人両方から申しますとね。御新造様が、

(いいえ、私は尼になんぞなりはしないから。)

(へえ、それではまたどう遊ばしてこんな処に、)

(ちっと用があって、)

とおっしゃるから、どういう御用でッて、まあ聞きました。

(そんなこといわれるのがうるさいからここに居るんだもの。可いから、お帰り。)

とこんな御様子なの。だって、それじゃあ困るわね。帰るも帰らないもありゃあしないわ。

じゃあまあそれはたってお聞き申しませんまでも、一体此家にはお一人でございますかって聞くと、

(二人。)とこうおっしゃった。