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せいぞうとぬま

清造と沼

宮島 資夫

「赤い鳥」赤い鳥社、1928(昭和3)年1月号

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,864 字 · 12 页

青空文庫

しかし、この村はどの家も、どの家もまったく貧しい暮しをしているので、どこでも清造ひとりを余計に養っておけるような家はなかったのです。

「おめえのような人間は、いまのうちに東京さいって、なにかしたらいいだ。気だても素直だから、どこさでもおいてくれべえ。こんな村に子どもひとりして暮していたってしようがない。早くいくがいいよ。」

秋の刈入れがすんで、手伝い仕事がなくなると、村のひとたちはだれも清造にこういうのでした。清造はそれを聞くと悲しくなって、沼のふちへ来て泣いていました。そうして今度は、石を二度、沼の中に投げこみました。ゆっくりと間を置いて、はじめのあわが消えてしまうと、また投げるのです。そのあわをじっと見てると、死んでいった父と母が、あわの中からなにかささやくように思われました。

清造が毎日、沼のふちに来てぼんやりして暮しているので、村の人もとうとうかまわなくなりました。食べられなくなった清造は、ついに村を出なければならなくなったのです。そうしてかれは、道を歩いて疲れてくると、横になって目をつぶりました。さびしい沼が、ふと浮かんで、ふたつのあわが浮かんで消えるのがはっきり見えました。