轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
たにさんだい
渓三題
木暮 理太郎
「中学生」1924(大正13)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,066 字 · 12 页
しかしながら私の見た所では、双六谷は黒部のような壮大な岩壁よりも、寧ろ水と森林との美しさに於て優っているのではないかと想われた。
双六谷に就き、如何にも幽怪な魔所の聯想を喚び起させるのは、橘南谿の『東遊記』の中にある「四五六谷」の一文である。しかし事実は、船津の者が二人で此谷の奥を窮めようとして、川沿いに数日尋ね入ったところ、或場所でふと互の顔が異形の化物に見えたので、驚いて逃げ帰ったという話を、伝聞の儘に書いたものに過ぎないのである。
笛吹川の上流東沢西沢は岩壁の壮大なことは或は双六谷を凌ぐものがある。東沢の一部では、鶏冠山の懸崖が水際から殆ど千尺の高さに屹立している。瀑の多いことも亦この谷の特色で、殊に西沢の五つ淵と呼ばれているものは、全体では百米を超えているであろうと思われる花崗岩を、五、六丈の瀑が五段となって奔下し、一つ一つの瀑には直径七、八間位の円く抉れた摺鉢状の瀑壺があって、土地の人は之を釜と唱えている。釜の水は瀑に打たれて水烟を揚げ、縁から溢れ落ちんとして落ちず、二、三回ぐるぐると渦を巻いているが、終に滑るように縁を乗り超えて、地響をうって、下の大釜に躍り込むのである。