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おんよく

温浴

坂口 安吾

「群像 第五巻第四号」1950(昭和25)年4月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,642 字 · 8 页

青空文庫

温泉場で釜の火をたくとは味気ない話だ。

私にとっては、三十八度から四十度ぐらいが最も快適な入浴であることを確認したが、冬は湯上りの寒さに抗する必要があるので、多少汗ばむのを我慢して、四十一二度の温泉の湯につかる。伊東市でこれ以上チッポケな湯殿はなかろうと思われるぐらい、洗い場もないほどのところだが、私にはこれ以上の広さも必要ではない。ただ釜たきをする人たちが気の毒であった。

私は朝と夕方と真夜中に入浴する。朝、ぬるいうちに私がはいり、そのあと熱くして家族がはいる。それをほッとくと、夕方、私には手頃のぬるさとなっている。

けれども、私がたいがい徹夜で仕事しており、深夜に入浴したがることを知っているので、気の毒がって、たいてくれる。八時ごろ四十五度ぐらいにしておくと、石の浴槽は冬でも却々冷却せず、十二時ごろは四十一二度、二時三時でも、三十八度ぐらいである。私は深夜に二度入浴して、頭を休め、冷えた全身をあたためることができる。私はタンサンガスに弱く、たちまち頭がしびれるので、せっかく炭火で室内をあたためても、窓をあけてガスをだすから、常に寒い思いをしていなければならないのである。