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みなとについたくろんぼ
港に着いた黒んぼ
小川 未明
「童話」1921(大正10)年6月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 6,903 字 · 14 页
大地は黒く湿って、草木は音なく眠っていました。
姉は、それから程経て、大尽の屋敷からもどってきました。思ったより、たいへんに時間がたったので、弟はどうしたろうと心配してきたのであります。けれど、そこには、弟の姿が見えませんでした。どこを探ねても見えませんでした。星の光が、かすかに地の上を照らしています。そこには、いままで目に入らなかった月見草が、かわいらしい花を開いていました。そして、これもいままで見なかった、姉の青い着物のえりに、宝石が星の光に射られて輝いていました。
明くる日から、姉は、狂人のようになって、すはだしで港の町々を歩いて、弟を探しました。
月の光が、しっとりと絹糸のように、空の下の港の町々の屋根を照らしています。そこの、果物屋には、店頭に、遠くの島から船に積んで送られてきた、果物がならんでいました。それらの果物の上にも、月の光が落ちるときに、果物は、はかない香りをたてていました。また、酒場では、いろいろの人々が集まって、唄をうたったり、酒を飲んだりして笑っていました。その店頭のガラス戸にも、月の光はさしています。また、港にとまっている船の旗の揺れている、ほばしらの上にも月の光は当たっています。