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みなとについたくろんぼ

港に着いた黒んぼ

小川 未明

「童話」1921(大正10)年6月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 6,903 字 · 14 页

青空文庫

」と、男はいいました。

あちらに、草の上にすわって、手に笛を持っておとなしく、弟は、姉のくるのをまっていました。

姉は、思案に沈んだ顔つきをして、着物のすそを夕風になぶらせながら弟のそばへ、はだしのまま近寄ってきました。そして、目は見えぬながら微笑んで、姉を迎えた、弟に向かって、

「姉さんは、ちょっと用事があっていってくるところがあるのよ。おまえは、どこへもいかずに、ここに待ってておくれ、すぐに姉さんは帰ってくるから。」と、やさしくいいました。

弟は、盲目の目を、姉の方に向けました。

「姉さんは、もう帰ってこないのではないの。僕は、なんだかそんなような気がするんだもの。」といいました。

「なぜ、そんな悲しいことをいうの。姉さんは、一時間とたたないうちに帰ってきてよ。」と、姉は、目に涙をためて答えました。

弟は、やっと姉のいうことがわかったみえて、黙ってうなずきました。

姉は、使いの男につれられて、いかめしい馬車に乗りました。馬車は、ひづめの音を砂地の上にたてて、日暮れ方の空の下をかなたに去りました。

弟は、そのひづめの音が遠く、かすかに、まったく聞こえなくなるまで、草の上にすわって、じっと耳を澄ましていました。