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ゆがしまのすうじつ

湯ヶ島の数日

宮本 百合子

「文芸時報」1926(大正15)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,903 字 · 4 页

青空文庫

十二月二十八日

十二月二十九日

落合楼、川に挾まれ、温泉宿らしくなくさっぱりしてよろし。部屋もよし。但、二部屋とれるかどうかは疑問だ。餅搗きの音がした。

十二月二十八日

目が醒めると、隣に尺八を吹く人あり。少し悲観。部屋を、直ぐ横の六畳二つにして貰う。

実に、すばらしい天気。碧い空、日光を吸って居る暖かそうな錆金色の枯草山、その枯草まじりに、鮮やかに紅葉したまま散りもせぬ蔦類。細かく風にそよぐ竹藪、蒼々とした杉木立、柑橘類、大島椿。伊豆はよいところという感銘深し。日本のなごやかな錦の配色など――金地に朱、黄、萌黄、茶、緑などあしらった――は、斯那自然の色調から生れたものと思う。蜜柑、橙々の枝もたわわに実ったのを見たら、岡本かの子の歌を連想した。南画的樹木多し。私達の部屋の障子をあけると大椎樹の下に、宿の吊橋が見える。

十二月二十九日

昨日の天候は特別であった由。今日は寒い。隣の尺八氏のところへ、客あり。老女。三味線をとりよせて、合奏す。六段をやるのだがテントンシャンとなだらかにゆかず、三味線も尺八も、互にもたれあって、テン、トン、シャン、とやっとこ進む。大いに愛嬌があって微笑した。