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げんぞうがはら

源蔵ヶ原

山本 周五郎

「週刊文春」文藝春秋新社、1962(昭和37)年12月17日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,843 字 · 28 页

青空文庫

ようにみえた。

「――泰さん」とのろは囁くように云った、「かんにんしてね、泰さん、――その親類のおばさんという人が、はっきりそれを聞いたそうだ」

のろが話し終ると、小座敷の中は耳が痛くなるほどの、張りつめた沈黙に蔽われた。すぐに、又次郎がなにか云いかけると、忠太が屹と泰二を睨んで、さあ、わけを聞こう、と挑むように云った。

「わけと云ったって、おれにはなんにもわかりゃしない、だい一、あいつがみごもっていたっていうことからして、おれはいま聞くのが初めてなんだ」と泰二がふるえ声で云った、「おれにはとても本当のこととは思えない」

「もう少しましな云い訳はねえのか」

「お光がみごもっていたなんて」泰二は忠太の言葉など耳にもはいらないように、うつろな眼を天床へ向けながら、首を左右に振った、「――そんなことがある筈はない、もしそんなことがあったとしたら、おれに、――いや、嘘だ、それはなにかの間違いだ、のろはなにか聞き違えたんだ」

「云うことはそれだけか」と宗吉が穏やかに云った、「お光ぼうは死んじまったからなんにも云うことはできねえ、おめえは生きている、生きている