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げんぞうがはら
源蔵ヶ原
山本 周五郎
「週刊文春」文藝春秋新社、1962(昭和37)年12月17日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,843 字 · 28 页
「うるせえな」と宗吉が云った、「少しおちついて飲めねえのか」
「これが性分でね、おちつくまではおちつけねえんだ」又次郎は手酌で飲み、摘み物を喰べた、「お光ぼうが大川へ身を投げて死んだ、なぜ死んだかっていうわけがわかった、それでなかまがここへ集まった、――お光ぼうはおれたち六人の守り神みてえなこで、誰も手出しをしちゃあいけねえってえ約束をした」
「今年の春まではな」と忠太が云った、「その約定は二月まで、泰二がお光ぼうと夫婦約束をするまでのこった」
「それだって、ほかの者が手出しをしねえって約定にゃ変りはねえだろう」と又次郎がやり返した、「泰二とお光ぼうの夫婦約束は、おれたちみんなが認めたんだ、泰二はだしぬいたんじゃなく、お光ぼうに話すまえにおれたちに相談した」
「そのとき」と忠太が証文に爪印を捺すような口ぶりで云った、「いのちがけだって泰二が云ったのも覚えてるだろう」
「芝居がかっているようだがしんけんだった」と宗吉が云った、「ふだんはあんまり口もきかねえし、なにか云うにしても、木の枝を折っぺしょるように、ぽきぽきした云いかたしかできねえ、それが、――いのちがけなんだ、と云いだしたんでおれたちは一言もなかった」