轻松读懂日语经典作品
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しおかぜ
潮風
豊島 与志雄
――「小悪魔の記録」――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,018 字 · 25 页
勇敢でしたよ。歯がかちあって、音をたてたじゃありませんか。
――ばかな。
片野さんは腹を立てたらしい。何を云ってももう返事をしないで、しきりに酒をのみだした。
――ちょっといいじゃありませんか。ごらんなさい、佐代子を……。
片野さんは眼もあげなかった。然しそこにじっと落着いてるところを見ると、或は、もう全然佐代子を無視してるのかも知れなかった。
けれども、佐代子はちょっと見直された。眼の奥の黒い影が、へんに深々と光ってるようだった。快活に酔客の相手をして、高い笑い声を立て、さしつけられる杯を、ふだんは手にもふれなかったが、ぐいと一息にあけていた。一体この家は、芳枝さんが上品に上品にと取繕ってるものだから、美智子も佐代子も物静かに振舞って、乱暴な客もなく、高橋の巧みな板場の腕も手伝って、困るような酔っ払いもなく、十二時近くなるとみんな帰ってもらえるほどだった。それが今日は、佐代子がへんにはしゃいで、会社員風の三人連れの客のところへ、やたらに銚子をはこび、高笑いして酒の相手になっていた。
「ちょいと、高橋さん、あんたの腕前がいいから、祝杯をあげるんだってさ。