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とろ

瀞

佐藤 垢石

「続たぬき汁」星書房、1946(昭和21)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,908 字 · 30 页

青空文庫

そこで、この友釣りは己の工夫を加えれば加えるほど釣れぬようになるものだ。研究すればするほど、勉強すればするほど釣りの道の深さが身にこたえ、野球の選手が打球に苦心していくうちに、一次スランプに陥るのと同じように、友釣りの技もどうにもこうにも自分の力では行なえ得ぬ日がくる。

そして、苦心に苦心を重ねた末、十年か二十年の修行の果てに、お前にめぐってくるものは、きょう父がお前の手を取り心を抑え、教え導いた傀儡の釣り姿である。結局、生まれたときの、無心の姿に帰るのだ。

そこではじめて、友釣りの技がお前の身につくのである。この父の言葉を忘れるなよ。

それは、ひとり釣りの道ばかりではない。人生の路、悉く同じである。芸術でも宗教でも、学問でも商業でも、武道でも政治でも、研鑽と工夫に長い年月苦心を重ね、渡世に骨身を削るのである。世間というものは学校にいるとき夢みたように簡単にはできていない。身を悲観する人もできようし、世を呪う人も現われてこよう。しかし、その鏤刻琢磨の間に進歩がある。そして、ある年令に達すると、つね日ごろ物に怠らなかった人にのみ、幼きときに我が心に映し受けた師聖の姿が、我が身に戻ってくるのである。