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かじ

火事

小川 未明

「山野に鍛へる少国民」1942(昭和17)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,986 字 · 6 页

青空文庫

」

信一は、弟の背後からのぞくと、なるほど、星晴れのした空の下に黒く起伏する屋根を越して、燃え上がる炎を見ました。さながら、赤いインキを流し散らすごとく、また惜しげなく投げられた金貨が燦然として飛ぶごとく、火焔は濃淡に夜の青ざめた肌を美しく彩っていました。すると、焼け出された人々や、その近所の人たちが、付近でうろうろしたり、大騒ぎをしたりしている有り様が、目に見えるような気がしました。

「叔母さんの家の方だね。」

「ああ、そうだ。叔母さんの家は、あっちだったね。」

「あの、すぎの木はどこだろう。」

こんもりとした常磐木の林の、片面だけが火焔に照らされて、明るく浮き出ているのが見えました。

「どこの林だろう、あんな林があったかな。あの高い煙突は、たしか駅の方のお湯屋だから、そうすると、叔母さんの家は、やはりあのあたりだ。」

二人の話し声が耳に入ったとみえて、お父さんも、お母さんも、二階へ上がってこられました。

「僕、叔母さんの家へ、みまいにいってきますよ。」と、このとき、信一が、いいました。

「だいじょうぶだ。叔母さんの家から、だいぶ離れている。」と、お父さんが、いわれました。