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ひなわじゅう
火縄銃
江戸川 乱歩
「江戸川乱歩全集 第十一巻」平凡社、1932(昭和7)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,117 字 · 19 页
その筋の人は二郎君を犯人と認められているようですが、これは、この事件の真相を見誤ったものと言わなければなりません。二郎君に限らず、この事件には、どこにも林一郎を殺害した犯人はいないのです。二郎君に嫌疑をかけた第一の理由は、この火繩銃が彼の所有品である事に依るらしいのですが、これは毫も理由にはならないと思います。如何に迂濶な人間でも、自分の銃で人を殺し、その上それを現場に置いて逃げる様な馬鹿な真似はしないでしょう。却てこの事は、二郎君の無罪を証拠だてるものだと思います。第二の理由は、その庭にある足跡ですが、これも亦反対の証拠を示しているに過ぎません。後でお調べになればよくわかる事ですが、往復共同じ歩幅で、しかもその歩幅は非常に狭いのです。殺人罪を犯した人間が、こんなに落ついて帰れるものでしょうか。尚、念の為めゆうべその足跡を辿って調べてみますと、馬鹿馬鹿しい事には、それは、このホテルの裏山の狂気娘が、裏の生垣を潜って庭に忍び込んだ足跡とわかったのです。第三の理由は、二郎君が椿事のあった時間に、恰度不在であって、その行き先を言わなかった事です。この事に就ては、私はあまり詳しい話は避け度いと思いますが、ただ、ボーイから、二郎君が外出すると直ぐ、二階に滞在している老紳士の令嬢が外出し、その令嬢は二郎君と殆ど同時に