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ひなわじゅう

火縄銃

江戸川 乱歩

「江戸川乱歩全集 第十一巻」平凡社、1932(昭和7)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,117 字 · 19 页

青空文庫

三時間ばかりの後、汽車はA山麓の停車場に着いた。何の前触れもしてなかったことだし、停車場には勿論誰も出迎えに来てはいなかったので、私達は直駅前の俥に乗ってホテルに向った。ホテルに着くと、私達を迎えたホテルのボーイが私達に答えて言った。

「林さんでございますか、弟様の方はどこかへお出ましになりましたが、兄様の方は裏の離れにお寝みでございます」

「昼寝かい」

「ハイ、毎日お昼から暫くお寝みでございますので。では離れへ御案内致しましょう」

その離れは母屋から庭を隔てて十間程奥に、一軒ポツンと建っている小さな洋館であったが、母屋から真直に長い廊下が通じていた。

部屋の前に私達を導いたボーイは「いつもお寝みの時は、内から錠を卸してございますので」と言いながら、閉された扉を軽く叩いた。併しよく眠っているとみえて、内部からは何の返事もない。今度は少し強く叩いたが、それでも林の深い眠りを覚ますことは出来なかった。

「オイ、林、起きぬか」

そこで、今度は私が大声に喚いてみた。これなら如何に寝込んでいても目を覚ますだろうと思ったが、どうした事か、内部からは何の物音も聞えない。