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ひなわじゅう
火縄銃
江戸川 乱歩
「江戸川乱歩全集 第十一巻」平凡社、1932(昭和7)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,117 字 · 19 页
橘は暫く変り果てた林の死体をじっと見詰ていたが、やがて、余りにも不意の血腥い出来事の為めに碌々口も利けず、唯おろおろ顔の色を変えて震えているボーイに、兎も角急を警察へ知らせるように吩咐けて置いて、さて、寝台の傍を離れると、更めて部屋の内部を克明に見廻し初めた。
先にも言った通り、この離れは一軒建の洋館だったが、部屋の様子を一応申し述べてみると、東と北とは壁、そして、その隅に寝台が置かれ、それに並んで、洋箪笥が据えてある。その真正面、つまり西側の北寄りの所が、この部屋の唯一の入口で、長い廊下を通って母屋に通えるようになっていた。南に面した方には二つの窓があり、その西側の窓の下に大きな卓子があって、その上にドッシリした本立が置かれ、それに数冊の洋書が立ててある。その本立の傍に、台にのせた、花生けだろうが、珍らしい形をした、といってもまん丸い球形なんだが、玻璃瓶があって、それに一杯水がいれてあった。その前には極めて旧式な一挺の猟銃が、無雑作に投げ出されてある。その外にペンとインキ、それから手紙が一通、これが机の上に置かれた凡てのものであった。卓子の前と横には型通り二脚の椅子が行儀よく据えてあった。