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かやくせん

火薬船

海野 十三

「大日本青年」(「浪立つ極東航路」のタイトルで。)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 61,552 字 · 124 页

青空文庫

竹は、ようやく合点がいって、ハルクがいったとおり、バンドをといて、太ももを、力のかぎり、ぎゅっとしめた。蛇毒は、ハルクのふくらはぎのむすび目をこえて、上へのぼってきたらしい。

「もっと強く、しばれ」

「でも、これ以上やると、皮がやぶけるぞ」

「皮ぐらい、やぶけてもいいんだ。なんだ、お前の力は、それっばかりか」

「なにを。うーん」

竹見は、全身の力を腕にあつめて、ハルクの太ももをしばった。

「うーむ」

さすがのハルクも、竹見が力一杯にしめつけたので、気が遠くなるような痛みに、うなった。

「これでいいか」

「うん、よし」

と、ハルクはうなずいて、

「竹、お前、向うへいっておれ」

「なんだと、――」

「お前がいると邪魔だ。向うへいっておれ」

「なにをするつもりだ」

「ええい、うるさい野郎だ。見ていてこしをぬかすな。これが、おれのさいごの力一杯なんだ!」

「えっ」

ハルクの手に、ぴかりとナイフの刃がひかった。と、思うと、懸け声もろとも、ハルクはナイフを自分の太ももに、ぐさりとつき刺した。

「おい、ハルク」

「だまっておれ! くそッ」

ハルクの硬いひじが、いきなり竹見の顎を、下からつきあげた。