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かやくせん
火薬船
海野 十三
「大日本青年」(「浪立つ極東航路」のタイトルで。)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 61,552 字 · 124 页
「壊血病とは、気の毒じゃ」と、虎船長はいって、くびをふった。
「じゃあ、すこしわけてやることにするか」
と、いって、事務長の方をふりかえった。
「でも、本船の貯蔵量は、ほんとにぎりぎり間に合うだけしかないのですから、どうですかな」
事務長は、分譲に反対の口ぶりだった。
「うむ、まあ海のうえでは、船のりと船のりとは相身互いだ。すこしでいいから、なんとか融通してやったらどうじゃ」
虎船長は、若い日の船乗り生活の追憶からして、相身互いの説もちだした。
事務長は、だまっていると、傍にいた一等運転士の坂谷が、船長と事務長の間にわって入り、
「じゃあ、こうしてはどうですかなあ。こっちからノーマ号へ出かけていって、むこうのいうがごとくはたして壊血病患者がどんなに多数いるかどうかをたしかめたうえで、野菜や果実をわたしてやったがいいではありませんか」
坂谷は、なかなかうまいことをいった。
「ああ、それならよかろう。事務長も、賛成じゃろう」
と虎船長は、事務長の同意を確かめたうえで、飲料水一斗、野菜二貫匁、林檎三十個を、ボートで持たせてやることにして、その指揮を事務長にやらせることにした。