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かやくせん

火薬船

海野 十三

「大日本青年」(「浪立つ極東航路」のタイトルで。)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 61,552 字 · 124 页

青空文庫

事務長は、みずから舵をひいた。

飲料水と野菜と果実とは、舳にあつめられ、そのうえに大きなカンバスのぬのをかぶせてあった。

虎船長は、本船をはなれていくボートをじっとみていたが、側をかえりみて、

「おい、一等運転士。あの荷は、ばかに大きいじゃないか。事務長は、もっていく分量を、まちがえたんじゃあるまいな」

「そうですね」と坂谷はくびをかしげて「まさか、事務長が、分量をまちがえることはありませんよ。事務長は、林檎一つさえ、ノーマ号へやりたがらなかったんですからねえ」

「そういえば、そうだが、他人に呉れてやる物は、いやに大きくみえるのが人情なんだろうか」

船長は、ふしぎそうに、くびを左右へふった。

そのうちに平靖号のボートは、停船しているノーマ号の舷側についた。縄梯子は、すでに水ぎわまで下されていた。

例のカンバスが、一度とりのぞかれたが、すぐ元のように、品物のうえに被せられた。ノーマ号の船員に、ちょっと見せただけのようであった。

ボートからは、事務長を先頭に、三人の者が、縄梯子をするするとのぼって、ノーマ号の甲板に上った。

ノーマ号の、高級船員らしいのが五六人、そこへ集ってきて、なにか協議をはじめた様子である。