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かやくせん

火薬船

海野 十三

「大日本青年」(「浪立つ極東航路」のタイトルで。)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 61,552 字 · 124 页

青空文庫

「おい、坂谷一等運転士。今のノーマ号の針路は、どっちへ向いているのかね」

虎船長が、質問した。

「はい、さっき南西へ針路をてんじました」

「ほう、南西へ。どこへいく気かな」

「その見当では、近くに海南島がありますが、まさか海南島へは、いかないでしょう。結局、仏領インドシナのハノイか、それとも、ずっと南に下りて、サイゴンへ入るか、そのどっちかでしょうと思います。

「ふむ、どっちにしても、相当の長い航程だ。ノーマ号を見うしなっちゃ、おしまいだから、ひとつ石炭をどんどんたいて、やつにくっついて、はなれないように船をやれ」

虎船長は、そこではじめて、にやりと笑顔を見せた。

謎の人物

そのころ、南シナ海を中心とする界隈の各国官辺すじで、ポーニンと名のる白人のことが、しきりに問題になっていた。

ポーニン氏は、トマトのようにかおの赤い、そして桃のような白い毛が密生した、小柄の白人であった。彼は、白系ロシア人であると自ら称していたが、だれも一ぺんでそのようなことを信じる者はなかった。

このポーニン氏は、身体の小柄ににあわず、ひどく心臓のつよい人物で、相当の金をもっているようにいっていたが、ときには宿屋の払いにもさしつかえることなどもあって、まことに複雑怪奇な人物というべき人物だった。