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かやくせん

火薬船

海野 十三

「大日本青年」(「浪立つ極東航路」のタイトルで。)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 61,552 字 · 124 页

青空文庫

ステッキの中にひそんでいた青斑の毒蛇が、蓋が明いたとたんに、警部モロのゆびさきに咬みついたのである。

モロは、面色土のごとくになり、発条仕掛の人形のように、突立ちあがり、椅子をたおした。彼の左手が、ぶるぶる震えるなわのようなものを、右手からひきちぎった。そしてハルクめがけて、ぱっと投げつけた。それは青斑の毒蛇だった。

「あっ!」

ハルクは、ふって湧いた意外な事件にすこしぼんやりしていたところだった。とびついて来るものが蛇だと知ったとき、ハルクは、拳をかためて、ぴしりと蛇を払いのけた。蛇は足元におちて、がさがさと音をたてた。

「こいつ奴!」

ハルクは、それがまさかおそるべき毒蛇だとまでは気づかず、こんどは、足をあげて、うむと、蛇をふみつけた。

「おう、うまくいった。ハルク、その先生をこっちへ抱いてこい」

突然ハルクに呼びかけたのは、船長ノルマンだった。

「あっ、船長」

「余計な口をきくな。はやくやれ、はやく。その先生をかかえて、こっちへ来い」

警部モロは、酒をのんでいたところへ、毒蛇に咬まれたので、たちまち毒が全身にまわって一命をおとしてしまったのである。

ノルマンは、ハルクに手つだわせ、彼が怪訝なかおをしているのをしかりつけながら、警部モロの死骸を、下水管の中へ放りこんで、しまつをしてしまった。