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むざん
無惨
黒岩 涙香
「小説叢」1889(明治22)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,602 字 · 56 页
大鞆は真実感心せしか或は浮立せて猶お其奥を聞んとの巧計なるか急に打開けし言葉の調子と為り「イヤ何うも感心した、何にも手掛りの無いのを是まで見破ぶるとは、成る程築地には支那人が日本の法権の及ばぬを奇貨として其様な失敬な事を仕て居るかナア、実に卓眼には恐れ入た」谷間田は笑壷に入り「フム恐れ入たか、爾折て出れば未だ聞せて遣る事が有る実はナ」と云いながら又も声を低くし「現場に立会た予審判事を初め刑部に至るまで丸ッきり手掛が無い様に思って居るけれど未だ目が利ぬと云う者だ己は一ツ非常な証拠者を見出して人知ず取て置た(大)エ、何か証拠品が落て居たのか夫は実に驚いたナ(谷)ナニ斯う抜目なく立廻らねば駄目だよ夫も君達の目で見ては何の証拠にも成らぬが苦労人の活た目で見れば夫が非常な証拠に成る(大)エ其品は何だ、見せたまえ、エ君賽転の類でも有るか(谷)馬鹿を云うな賽転などなら誰が見ても証拠品と思うワな己の目附たのは未だズット小さい者だ細い者だ」大鞆は益々詰寄り「エ何だ何れ程細い者だ(谷)聞せるのじゃ無いけれど君だから打明けるが実は髪の毛だ、夫も唯一本アノ握ッた