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むざん
無惨
黒岩 涙香
「小説叢」1889(明治22)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,602 字 · 56 页
手に附て居たから誰も知らぬ先に己がコッソリ取ッて置た」大鞆は心の中にて私に笑を催おし、「ナニ其髪の毛なら手前より己様の方が先に見附たのだ実は四本握って居たのをソッと三本だけ取て置た、夫を知らずに残りの一本を取て好い気に成て居やがる老耄め、併し己の方は若しも証拠隠匿の罪に落ては成らぬと一本残して置たのに彼奴其一本を取れば後に残りが無いから取も直さず犯罪の証拠を隠したに当る夫を知ないでヘンなにを自慢仕やがるんだ」と笑う心を推隠して「ヘヽエ、君の目の附所は実に違うナル程僕も髪の毛を一本握ッて居るのをば見たけれど夫が証拠に成うとは思わず、実に後悔だ君より先へ取て置ば好ったのに(谷)ナアニ君などが取たって仕方が無いワネ、若し君ならば一本の髪の毛を何うして証拠にする天きり証拠にする術さえ知らぬ癖に(大)知なくても先へ取れば後で君に問うのサ何うすれば証拠に成るだろうと、エー君、何うか聞かせて呉れたまえ極内で、エ一本の髪の毛が何うして証拠に成る」下から煽げば浮々と谷間田は誇り裂けるほどに顔を拡げて「先ア見たまえ此髪の毛を」と云いながら首に掛たる