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むざん
無惨
黒岩 涙香
「小説叢」1889(明治22)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,602 字 · 56 页
声が聞えたが何うして此罪人が分ッたか―(荻)ヤヽ、谷間田貴公も陳施寧と見込を附けたか(谷)見込所では無い最うお紺を捕えて参りました、お紺の証言で陳施寧が罪人と云う事から殺された本人の身分殺された原因残らず分りました(荻)夫は実に感心だ谷間田も剛いが、大鞆も剛い者だ(谷)エ大鞆が何故剛い―
下篇(氷解)
全く谷間田の云いし如くお紺の言立にも此事件の大疑団は氷解したり今お紺が荻沢警部の尋問に答えたる事の荒増を茲に記さん
妾(お紺)は長崎の生れにて十七歳の時遊廓に身を沈め多く西洋人支那人などを客とせしが間もなく或人に買取られ上海に送られたり上海にて同じ勤めをするうちに深く妾を愛し初めしは陳施寧と呼ぶ支那人なり施寧は可なりの雑貨商にして兼てより長崎にも支店を開き弟の陳金起と言える者を其支店に出張させ日本の雑貨買入などの事を任せ置きたるに弟金起は兎角放埓にして悪しき行い多く殊に支店の金円を遣い込みて施寧の許へとては一銭も送らざる故施寧は自ら長崎に渡らんとの心を起し夫にしてはお紺こそ長崎の者なれば引連れ行きて都合好きこと多からんと終に妾を購いて長崎に連れ来れり