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むほうもの

無法者

豊島 与志雄

「中央公論 文芸特集」1951(昭和26)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,837 字 · 24 页

青空文庫

」

志村は舌打ちして、もう成り行きに任せることにきめた。

午後、彼は会社に顔を出し、夕刻、行きつけの小料理屋で酒を飲み、飲んでるうちに時間を過ごして、今井家へ行ったのは七時頃だった。

女中は志村の顔を見るとすぐ、十畳の日本座敷の方へ案内した。懇意な顔が揃っていた。河口と吉岡、有松夫人と久木未亡人、それに房代夫人、五人で食卓をかこんでいた。フグ料理の大皿が並び、酒の銚子が何本も出ていた。

房代夫人はくだけた調子で志村を迎えた。自宅ではいつもそうなのである。

「六時のお約束でしたのに、なにしていらしたの。お後れなすった罰に、出迎えませんでしたわ。」

志村が座席に落着くと、彼女は眼でちらちら笑いながら言った。

「やまぶきへお伴する約束でしたけれど、そのような割烹旅館なんか、どうせでたらめなことにきまってますから、宅でフグ料理を差上げることに致しましたの。ここが割烹旅館のおつもりで、酔いつぶれてお泊りなすっても、宜しゅうございますわ。」

有松夫人と久木未亡人は眼を見合って頼笑み、河口と吉岡は笑いだした。志村に関するいろんなことがぶちまけられては、酒の肴にされていたに違いなかった。