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むせんでんしんのきんじょう
無線電信の近状
寺田 寅彦
「東京朝日新聞」1907(明治40)年9月17日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,176 字 · 5 页
なおこれを改良して近頃は符号などは用いず、言語をそのままに送るいわゆる無線電話が出来るようになった。ベルリンとナウエンとの間十六マイルの距離に試みて成効したという。その仕掛けは簡単なものである。すなわち発信器の方では不断に規則正しい波を送りそのアンテナに電話の送話器を接続し、受信器には前述のエレクトロリチック・デテクターを用うればよいのである。遠からず大洋にある船舶と電話が出来る時が来るだろう。
なお受信器として白熱灯を用うるいわゆるグローランプ・デテクターというのも出来た。普通の白熱灯の炭素線の外囲にこれと触れぬくらいの金属筒を着せたものである。今電灯を点ずると、灼熱した炭素線から陰電気を帯びたいわゆる電子と称する微細なものが飛び出して金属筒に附着する。この時炭素線と筒との間に交番電流を通ずると、筒から線の方へ陰電気が通う事が出来ぬため、電流はもはや交番でなく直流に変じるのである。受信器のアンテナに電波が来れば急速な交番電流が起る、これを白熱灯デテクターおよび電流計あるいは電話の受話器に接続すれば、ごく微弱な電波でも感じるから遠距離の通信には都合のよいものである。