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むだい

無題

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第三十巻」新日本出版社、1986(昭和61)年3月20日初版

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,172 字 · 11 页

青空文庫

何故、私共は、あらゆる過去を一撃の下に截り離して、空気と倶に翔ぶ事は出来ないのか、大らかに、自由に、はるばると……我友よ、何故私共は翔ぶ事が出来ないのか。

永遠な、過去と未来とを縦に貫く一線は、又、無辺在な左右を縫う他の一線と、此の小さい無力な私の上に確然と交叉して居るのを感じずには居られないのである。

斯うやって考えて来ると、私は、今日の生活が、如何に「智」に不足して居るかを思わずには居られない。自分には云わずもがな、総ての人に、「智慧」が豊かに与えられて居ない。

智識ではない。智慧である。運命を知り、魂を浄め、時間と空間の規制を超える生命の智慧である。

人間の心を、心の起す種々雑多な現象を、観、批評し、想い思う明らかな叡智を、充分に持って居ないのではあるまいか。

総ての人間は戦った。けれども平和を求めて居たのだ。

総ての人間は、約束の「名」に惑わされた。けれども、互に同じ「人」であるのを知り、約束の名は、「名」として見られる筈であった。

現在、私共の生活を支配して居る数多の形式、形式の生む種々の迷信と、羈絆とは、如何な力で解かれなければならないのか。