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つばくろ(つばくろ)
燕(つばくろ)
山本 周五郎
「オール読物」文藝春秋新社、1960(昭和35)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,395 字 · 52 页
「もういい、この辺でよそう」梶本がふと気づいたように云った、「としよりが集まるときまってこういう話になる、今日だけは年のことも病気のことも忘れようじゃないか」「そのとおりだが、養生のしようによって天寿をまっとうするのも心得の一つだからね」と庄野が云った、「梶本は肥えているから、年相応な養生をするほうがいいと思う、六十を越してから肥えるのはもっともよくないと云うぞ」「六十まではもっと肥えていた」と梶本が云った、「絵を描くのに不自由したくらいだが、そのころに比べると、これでもう三分の一は痩せたんだ、昔と変らないのは佐藤だな、肥えもせず痩せもせず、言葉ぐせまでが昔のとおりじゃないか」
それでまた健康の話に戻ったが、やがて老女のいよが襖をあけて、「旦那さま、ちょっとどうぞ」と云った。
「なんだ」と又左衛門は渡貫と庄野に茶をすすめながら振返った。
「花屋の主人がまいりましたので」
「ああ」と又左衛門は頷き、他の三人に向って、「平作だ」と云い、老女にもういちど頷いてみせた、「今日は客なんだ、こちらへとおしてくれ」
老女は襖を閉めて去った。
「花屋だって」