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つばくろ(つばくろ)

燕(つばくろ)

山本 周五郎

「オール読物」文藝春秋新社、1960(昭和35)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,395 字 · 52 页

青空文庫

ようだ」

「あの乱暴者がね」と梶本が云った、「――故郷へ帰って、孫娘と小さな料理茶屋か」

「孫娘といってももう三十くらいだった」と渡貫が云って、独りで頷いた、「縹緻もいいしあいそもいいし、食わせるものもなかなかしゃれていたよ」

「いまに城下の客をさらってみせると云っていたな」と又左衛門が云った、「そのうちに建て増しをするそうだが、新しい座敷は水の上へさしかけに造るんだそうだよ」

襖をあけて、老女が云った、「花屋のあるじは失礼をすると申しております」

「失礼をするって」又左衛門が云った、「ここへ来るのはいやだと云うのか」

「いいえ」と老女のいよは答えた、「いまでは身分が違いますから、みなさまとの御同席は遠慮したい、その代りに御膳は腕かぎりのものを差上げます、と申しておられます」

「相変らず強情らしいな」

「しかし昔のなかまだ」と渡貫が云った、「われわれも隠居の身の上だし、そんなに堅苦しく考えることはない、気詰りなら挨拶だけでもしに来させるがいい」

「まあいいさ」又左衛門が云った、「来たくないものを呼ぶことはない、好きなようにさせておこう」そして老女に頷いてみせた、「――ではうまい