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つばくろ(つばくろ)

燕(つばくろ)

山本 周五郎

「オール読物」文藝春秋新社、1960(昭和35)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,395 字 · 52 页

青空文庫

つもりはなかった、どちらも誰か止めにはいるのを待っていた、私にはそれがわかったので止めにはいったのだ」

「佐藤らしいな」と梶本が頷いた、「いかにも佐藤らしい、彼はいつもそういう役にまわっていた、見えないところで人を助けるとか、人を慰めなだめるとか、喧嘩の仲裁をするとかね」

「そうだな」と庄野が云った、「われわれのなかまが長続きしたのも、梶取りに佐藤がいたためかもしれない、あのころから佐藤だけは老成していたからな」

そして庄野はまた咳をし始め、かなり長いあいだ咳きこんでいてから、懐紙を出して眼をぬぐい、口のまわりをぬぐった。

「夏の風邪は治りがおそいというが」と庄野は弱よわしく云った、「江戸で辞任の許しが出たあとすぐにひいた風邪がまだ治らない、肝臓が弱っているからなおさらだろうがね」

「義歯を入れるほうがいい、歯が悪いのが万病のもとだというぞ」

襖をあけて、老女のいよが「旦那さま」と云い、又左衛門が振向くと、一種の眼まぜをした。なにか客には知らせたくない用があるらしい、又左衛門は三人に会釈して立っていった。

「新原の奥さまです」又左衛門が近よる