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つばくろ(つばくろ)

燕(つばくろ)

山本 周五郎

「オール読物」文藝春秋新社、1960(昭和35)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,395 字 · 52 页

青空文庫

のか」

このあいだに、湖のほうから若侍たちが次つぎとあがって来、このようすを遠巻きにして眺めていた。こちらでは早苗が、しきりに「お兄さま」と呼びかけてい、村野友四郎が彼女を押えていた。

「やきもちのうえに作法まで持ちだすな」と正之助が云った、「おれが雪緒さんと話したのは、畑中が邪推するようなことじゃない、そのへんでやめにしないと、あとで引込みのつかないことになるぞ」

「雪緒さんのことだけではない」と畑中がむきになって叫んだ、「きさまはおれの妹まで誘惑した」

「お兄さま」と早苗が叫んだ。

「現に下生えの中に履物が落ちていた、きさまが松林の奥で妹になにをしたか、もし弁解ができるならしてみろ」

「そんなことはしないね」

「弁解もできないのか」

「できなくはない、する必要がないんだ」

「よし、抜け」と叫んで畑中はうしろへとびさがり、刀の柄へ手をかけた。

「どうするんだ」

「きさまを斬ってやる」と云って畑中は刀を抜いた、「いいから抜け、佐藤」

「おれを斬るって」正之助の眼がいたずらそうに光った、「おまえの腕でか」

「誰も止めるな」と畑中が叫んだ。

正之助はしなやかな身ぶりで刀を抜き、同時にはいていた