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ばくやくのはなかご

爆薬の花籠

海野 十三

「少女倶楽部」1940(昭和15)年6月~1941(昭和16)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,908 字 · 204 页

青空文庫

もう二、三箇月、東京各地で稼いだら、その次には一座そろって上海へ渡ろうと、黒川団長は、そんな先のことまでを口にした。

ちょうど、七日目の昼間興行のとき、房枝が、アパートを出て、楽屋入をすると、黒川新団長が、にこにこ顔でそばへよってきた。

「おい、房枝。今日、お前のところへ、すばらしく大きな花環の贈物がとどいたよ。天幕の正面の柱に高くあげておいたよ」

「まあ、ほんとう? だれからかしら」

房枝は、大花環と聞いて、目をみはった。

「さあ、その贈主のことだが『一婦人より』としてあるだけで、名前はない」

「一婦人より、ですって。だれなんでしょうね」

「まあ、その幕の間から、ちょっとのぞいてごらん。実にすばらしい花環だ」

団長は、自分がその花環をもらったようによろこぶのであった。そこで房枝は、顔があかくなったが、団長にすすめられるままに、幕に手をかけてそっと覗いた。

「あーら、ほんとうね。まあ、きれいだこと」

房枝は、思わずおどろきのこえをあげた。

「どうだ、りっぱなものだろうがな。わしはちかごろ、あんな見事な大花環を見たことがない。房枝、お前は、今はおしもおされもせぬ一座の大花形だよ」