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ばくやくのはなかご

爆薬の花籠

海野 十三

「少女倶楽部」1940(昭和15)年6月~1941(昭和16)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,908 字 · 204 页

青空文庫

しかし、ざんねんなことには、その人物は、だいぶん遠くにいるために、どのような顔をした人間だかはっきりわからなかった。と、ここでは、そのへんにとどめておく。

面会のしらせ

きょう午後十時に、興行をしまったら、黒川と房枝は、しめしあわせて、東京丸ノ内のネオン・ビルの前へ急行することに、二人の打合せができた。

(むこうに待っているのは、何者かはしらないが、あったうえで、よく話をして、ミマツ曲馬団の上に、この上ひどい危難をかけないようにしてもらおう)

と、これは新黒川団長の決心だった。

「おい房枝、あんまりしおれていると、他の団員にあやしまれて、あのことが外へ知れてしまうぞ。すると、とたんに、どかーんだから、わしはいやだよ。ここはひとつ元気を出して、興行中は、あの花籠事件のことを忘れていておくれ。おい、房枝」

「はい、団長さん。あたし、大丈夫よ」

そういって房枝は、けなげにも、顔をあげて、むりにほほえんだ。

すると、ちょうどこのとき、団員の女の子が、かけこんできた。

「あら、房枝さん。こんなところにいたの。ずいぶんさがしたわ。おや団長さんもここにいらしったの」