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ばくやくのはなかご
爆薬の花籠
海野 十三
「少女倶楽部」1940(昭和15)年6月~1941(昭和16)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,908 字 · 204 页
そのとき署内では、大急ぎで駈けつけた田所検事を中央にかこんで、署長や司法主任や係官の刑事や巡査が、額をあつめて、会議の最中であった。
「そうか、昨日の午後四時か」
と、田所検事は、近眼鏡にちょっと手をかけて、目をしばたたく。
「ええ、午後四時でしたな。トラ十へ、これをさしいれたいから頼みますと、にぎりずしが一折と、鼻紙一帖とをもってきたのです。そこへ出たのが、この間、拝命したばかりの若い巡査だったが、『トラ十へ』という声に気がついて、その巡査を押しのけて前へ出て応接したのが、ここにいる甲野巡査です。甲野巡査の第六感の手柄ですよ。ははは」
「署長さん、第六感なんて、そんなものじゃないのです。そうもちあげないで下さい」
甲野巡査が、頭をかく。
「じゃあ、これから後のことを、甲野巡査から聞こう。話したまえ」
「は、検事さん。トラ十へ差し入れ、というので、私はぎくんときました。だって、これは秘密になっていますが、トラ十は五日前に、ここの留置場を破って逃げ出して、今はここにいないんです。だからうっかりしていると、トラ十なんか、ここにはいやしないぞといいたくなる。しかしそういっては、トラ十の逃げ出したことがばれる。