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ばくやくのはなかご

爆薬の花籠

海野 十三

「少女倶楽部」1940(昭和15)年6月~1941(昭和16)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,908 字 · 204 页

青空文庫

「いや、ほんとうのことをいっているのよ。あたしいつだか、新聞だったか、本だったかで読んだのですけれど、帆村荘六という名探偵があるでしょう。その名探偵帆村荘六のことを、今思い出したのよ。そう名探偵は、背が高くて、青い顔をしていて、唇をへの字にまげるのがくせなんですって」と、いいながらも、房枝は、目の前にいる曾呂利本馬が、ひどく帆村荘六に似ていることに気がつくと、なんだか、おそろしくなった。

「房枝さん。そんなばかばかしい話はもうよしにしましょう」

そういっているときだった。ろうかのむこうに、がたがたと、高い足音がきこえ、こっちへ、急いでくる様子だった。食堂へとびこんできたのをみると、それは、さっき甲板へ様子を見にいった連中だった。

「おい皆、船は大丈夫だから、安心しろ」

「えっ、大丈夫か。沈没するような心配はないか」

「うん、沈没なんかしやせんよ。さっきの爆弾は、左舷の横、五、六メートルの海中で炸裂したんだそうだ、それだけはなれていりゃ、大丈夫だ」

「へえ、そうかね。こっちの船体に異状がないと聞いて、大安心だ」

「なにしろ、灯火管制中だから、明りをつけて検査するわけにはいかないが、船腹の鉄板が、爆発のときのひどい水圧で、すこしへこんだらしい。