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ばくやくのはなかご

爆薬の花籠

海野 十三

「少女倶楽部」1940(昭和15)年6月~1941(昭和16)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,908 字 · 204 页

青空文庫

彼は、命よりも大事な例の箱を、しっかり背中に、ななめに背おっていた。

海は、いつまでも暗かった。まるで、時刻が、この海ばかりを、忘れ去ったかのように思われた。

帆村は、だんだん疲を感じてきた。そしてついには、うとうとと眠気をもよおしてきた。

(これは、たいへん、うっかり眠ろうものなら、お陀仏になってしまうぞ!)

と思ったので、彼は、船にいるとき、とくべつに、服のうえから腹にまきつけてきた帯をとき、命とすがる板切のわれ目に帯をとおして、しっかりと結び、他の端を、われとわが左手首にしばりつけ、ざぶりと波に洗われることがあっても、からだと板切とは、決して放れないように、用意をしたのであった。

この用意があったおかげで、彼は、いくたびか、眠りこけて、ざぶりと海中に、からだをしずませることはあったが、そのたびに、はッと気がつき、帯をたよりに、命の板切のうえにとりつくことができた。

長い夜が、ようやく暁の微光に白みそめた。風が出はじめて、海上に霧はうごき、波はようやく高い。今夜あたり、一あれ来そうな模様である。帆村探偵には、あらたな心配のたねができた。

夜が明けてみると、昨夜中、命をあずけてとりついていた板切というのが、船具の上にかぶせておく屋根だったことがわかった。