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ばくやくのはなかご

爆薬の花籠

海野 十三

「少女倶楽部」1940(昭和15)年6月~1941(昭和16)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,908 字 · 204 页

青空文庫

トラ十は、封筒と白紙とを重ねて、べりべりッと破った。そして、海中へなげこもうとしたが、急に気がかわって、破ったやつを、ふたたびジャケツの下におしこんだ。そのトラ十は、帆村に、なぜこっちを向いたのかと、叱りつけはしなかった。

「うーん、あの野郎……」

トラ十は、よほどくやしいとみえ、ひとりで獣のようにうなっている。

帆村は、実は、さっきから、トラ十のすることを、すっかり見てしまったのだった。うしろを向かない帆村に、なぜそんな器用なことができたであろうか。それはなんでもない。彼は小さな凸面鏡を手の中にもっていて、その鏡にうしろのトラ十のすることをうつし、すっかりみてしまったのである。

「おい、曾呂利。そこに、お前のもっているその箱には、何がはいっているのか。おい、こっちへ、それをもって来い」

とつぜん、トラ十が、帆村の大事にしている箱に目をつけ、つよい語気でどなった。ああ、この箱! これをトラ十に渡しては一大事である。帆村は、俄かに、一大窮地へほうりこまれた!

貴重なX塗料

このときほど、困ったことはない、と、帆村探偵はのちのちまでも、その当時のことを語りぐさにしている。