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はちゅうかんじけん

爬虫館事件

海野 十三

「新青年」1932(昭和7)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,914 字 · 38 页

青空文庫

また物静かな園長が落すというのも可怪しい。鴨田が後に怪まれることを勘定に入れて落して行ったか、さもなくて鴨田が自ら落ちていたと偽り届けたものか、どっちかである。始めのようだと鴨田を陥れようとしているのは誰かという問題となり、後のようだと鴨田は自ら嫌疑をうけようとするもので、そこには容易ならぬ犯罪性を発見することになって、帆村は鴨田の性格を知るために、室内を隅から隅まで見廻して、何か怪しい物はないかと探し求めた。

「鴨田さんの鞄ですか、これは」と帆村は棚の上に載っている黒皮の書類鞄を指した。

「そうです、私のです」

「随分大きいですね」

「私達は動物のスケッチを入れるので、こんな特製のものじゃないと間に合わないのです」

「こっちの方に、同じような形をした大きなタンクみたいなものが三つも横になっていますが、これは何ですか」

「それは私の学位論文に使った装置なんです。いまは使っていませんので、空も同様です」

「前は何が入っていたのですか」

「いろいろな目的に使いますが、ヘビが風邪をひいたときには、此の中に入れて蒸気で蒸してやったりします」

「それにしては、何だか液体でも入っていそうなタンクですね」