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はちゅうかんじけん

爬虫館事件

海野 十三

「新青年」1932(昭和7)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,914 字 · 38 页

青空文庫

それは周到なる注意で今日まで貯蔵されていました。そして又ここに並んでいるタンクは、巧妙な構造をもった人造胃腸だったんです」

あまりに意外な帆村の言葉に、一同は唖然として彼の唇を見守るばかりだった。

「鴨田さんは三十日の午前十一時二十分頃、園長をひそかに人気のない此の室に誘い、毒物で殺したんです。そこで直ちに園長の軽装を剥いで裸体とし、着衣などは、あの大鞄に入れ其の夕方、何喰わぬ顔で園外に搬び去りましたが、それは後の話として、鴨田さんは園長の口をこじ開けるや、蟒の消化液では溶けない金歯をすっかり外して別にすると、もうこれで全部が溶けるものと安心して此の第三タンクに入れました。そこで永年貯蔵して置いたニシキヘビ消化液をタンクへ入れて密封をすると、電動仕掛けで同心管――それは襞をもった人造胃腸なんですが、その胃腸を動かし始めたんです。適当な温度に保ってこれを続けたものですから、鴨田さんの研究によると、今夜の八時頃までに完全に園長の身体はタンクの中で、影も形もなく融解してしまうことが判っていました。

鴨田さんにその自信があったればこそ、この時間になってタンクを開くことを承知されたのです。