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はちゅうかんじけん
爬虫館事件
海野 十三
「新青年」1932(昭和7)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,914 字 · 38 页
「では金鵄勲章組ですね」
「ええ、功六級の曹長でございます」応えながらも、こんなことが父の失踪に何の関係があるのかと、トシ子は探偵の頭脳に稍失望を感じないわけにゆかなかった。
しかし最後へ来て、この些細らしくみえるのが、事件解決の一つの鍵となろうとは二人もこの時は夢想だもしなかった。
「園長はそんなとき、帽子も上衣も着ないでお自宅にも云わず、ブラリと出掛けるのですか」
「そんなことは先ずございません。自宅に云わなくとも、帽子や上衣は暖いときならば兎に角、もう十一月の声を聞き、どっちかと云えば、オーヴァーが欲しい時節です。帽子や洋服は着てゆくだろうと思いますの」
「その上衣はどこにありましょうか。鳥渡拝見したいのですが……」
「上衣はうちにございますから、どうかいらしって下さい」
「ではこれから直ぐに伺いましょう。みちみち古い戦友のことも、もっと話して戴こうと思います」
「ああ、半崎甲平さんのことですか?」トシ子嬢は、父の戦友の名前を初めて口にしたのだった。
2
園長邸を訪ねた帆村は心痛している夫人を慰め、遺留の上衣を丹念に調べてから何か手帖に書き止めると、外に園長の写真を一葉借り、園長の指紋を一通り探し出した上で地続きの動物園の裏門を潜ったのだった。