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ちちやくもをかたる

父八雲を語る

稲垣 巌

「父八雲を語る」ラジオ放送、1934(昭和9)年11月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,383 字 · 15 页

青空文庫

」といふ意味を表すには「イハホ、タダアソブ トアソブ。ナンボ ワルキ、デス。スコシトキ ベンキョ シマセウ ヨキ。」まあこんな調子ですから、英語を知らないよその人とは中々話が出来ません。ですから立派な文学的材料を持った体験者などを見付けても、必ず夫人が間に立って通訳しなければなりませんでした。

「怪談」の材料は、夜窓鬼談、百物語、玉すだれ、臥遊奇談、古今著聞集などに拠ってゐますが、之は、夫人がヘルンの為めに古本屋をあさり廻り、多くの怪談をむさぼり読んで、気に入りさうなのを選んで語り聞かせたものです。「怪談の書物は私の宝です」とヘルンは常々言ってゐましたので、夫人は八方手を尽して怪談本を買ひ集め、片っ端から読み耽ったのでありました。ヘルン文庫中の四百冊に近い和書の大部分は妖怪に関するものでありますが、高等な教育を受けなかった夫人が漢文や古語を読み解くのにずゐぶん苦心惨憺したやうです。

本を見ながら話してはいけないとの命令ですから、夫人は読んだ話をすっかり自分のものにして、かゝらねばならなかったのです。淋しい夜、ランプの芯を下げて夫人の怪談が始まります。