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ちちおやとじてんしゃ
父親と自転車
小川 未明
「教育・国語教育」1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,677 字 · 4 页
いま、吉坊がぼんやり立ってさも乗りたそうに、自分の走るのを見ているのに気がつくと、車をとめて、
「吉ちゃん、僕のうしろにいっしょに、お乗りよ。」といいました。
吉坊は、清ちゃんが、そういってくれたので、どんなにありがたかったでしょう。
「いいの、清ちゃん、僕をうしろに乗せてくれる?」と、吉坊は、清ちゃんのいったことを疑いでもするように、念をおして、それから、そのうしろに乗せてもらいました。吉坊は、清ちゃんの肩につかまりました。清ちゃんは、ハンドルを握っていました。二人は、いままでゆかなかったような、遠方まで、一息に走ってゆくことができました。
「清ちゃん、こんな遠いところまで、たびたびきたことがある?」
「きたことはない。きょうは吉ちゃんが、いっしょだから、僕きたんだよ。」と、清ちゃんは、気強かったのです。そして、めったに通らない道をまわりまわって、またなつかしい自分の家の前まで帰ってくると、なんだかたいへんに遠い旅行でもしてきたように、愉快な気がしたのです。
「ありがとう。」と、吉坊は、お礼をいいました。
「吉ちゃんも今度お父さんに、自転車を買っておもらいよ。