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ぼたんとうき

牡丹灯記

田中 貢太郎

在线阅读田中 貢太郎《牡丹灯記(ぼたんとうき)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,377 字 · 15 页

青空文庫

元の末に方国珍という者が浙東の地に割拠すると、毎年正月十五日の上元の夜から五日間、明州で燈籠を点けさしたので、城内の者はそれを観て一晩中遊び戯れた。

それは至正庚子の歳に当る上元の夜のことであった。家々の簷に掲げた燈籠に明るい月が射して、その燈は微赤く滲んだようにぼんやりとなって見えた。喬生も自分の家の門口へ立って、観燈の夜の模様を見ていた。鎮明嶺の下に住んでいるこの若い男は、近頃愛していた女房に死なれたので、気病のようになっているところであった。

風のない暖かな晩であった。観燈の人びとは、面白そうに喋りあったり笑いあったりして、騒ぎながら喬生の前を往来した。その人びとの中には若い女の群もあった。女達は綺麗な燈籠を持っていた。喬生はその燈に映しだされた女の姿や容貌が、自分の女房に似ていでもすると、いきいきとした眼をしたが、すぐ力のない悲しそうな眼になった。

月が傾いて往来の人もとぎれがちになってきた。それでも喬生はぽつねんと立っていた。軽い韈の音が耳についた。彼は見るともなしに東の方へ眼をやった。婢であろう稚児髷のような髪をした少女に燈籠を持たせて、その後から若い女が歩いてきたが、少女の持っている燈籠の頭には、真紅の色の鮮やかな二つの牡丹の花の飾がしてあった。