轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ぼたん
牡丹
宮本 百合子
「改造」1927(昭和2)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,684 字 · 26 页
泣いて泣いて、また変になってしまうのであった。
不幸な親子のうちへ訪ねて来るのは原宿だけであった。それも義務上一年に数えるほど顔を出すに過ぎない。奥さんは、寒中余り水に濡れては震えていたので肺炎を起して没した。幸雄はまったく孤独な者となったのを心のどこかで感じたらしく見えた。箪笥の中から茶箪笥の中まで異常な注意深さで管理した。台所まで口を出すので、石川は或るとき、
「台所のことは女の領分ですから、婆やにお委せなさいまし」
と云い含めた。
「あなたは旦那様ですから、ちゃんと奥にいらして、食べたいものをお云いつけなさい。そうすれば何でも出来ますから」
「――そうかい、できるかい」
「きっと出来ます」
石川は、何の魅力でか誰の云うこともきかない幸雄の信頼を受ける唯一人の者であった。
朝起きる、寝台で牛乳を飲む。着物を着換え、顔を洗ってから、庭に出る。ちびた下駄を穿いて昼までぶらぶら歩き廻る。午後昼寝。また散歩。夕飯後風呂に入ってきっちり八時には床に入った。九時には婆やが燈を消して歩くのだが、その間に口を利くのは朝御用ききが来たときだけであった。笑うことがない。