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ものすごきひとくいばなのかい
物凄き人喰い花の怪
国枝 史郎
「現代」1923(大正12)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,756 字 · 12 页
一
一
バルビューさんの亡霊が市中へ出るという噂が、誰からともなく云い出された。
奇怪極まるこの評判が西班牙中に拡がった頃一人の勝れた心霊学者がマドリッド市長の依頼に依ってマドリッド市へ研究に来た。
市長、警視総監、新聞記者、刑事や巡査に案内されて心霊学者のフィリッポ氏が真先に訪問れた土地というのは「バルビューさんの幽霊」がまだ此浮世に生きていた頃そのお父さんのコックニー博士と一緒に工場を経営していたカンタブリアという小村であって、市から半哩ほど距たった寂しい陰気な土地であった。
禿げた小丘を背後に負って古びた工場が建っていた。工場の持主のコックニー博士が行方不明になってからまだ三月しか経っていないのに工場は既に廃屋同然恐ろしい程に荒れていた。工場に添うて建っているのは博士と家政婦とバルビュー氏とが明暮れ住んでいた母屋であったが、窓も玄関も蜘蛛の巣だらけで人の住家とも思われない。観る物悉く荒れ果てた中にただ一つだけ栄えているのは母屋や工場を囲繞して立派に造られた花園だけで折柄秋の太陽を浴びてあらゆる薬草毒草の花が虹のように燦然と輝いている。
心霊学者のフィリッポ氏はつくづく花園を眺めていたが感に堪えたように呟いた。