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ぶっしんいちにょのかがく

物心一如の科学

中谷 宇吉郎

「禪文化 第七号」花園大学禪文化研究会、1957(昭和32)年3月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,786 字 · 20 页

青空文庫

そして自然界の実体は、この両者を融合したところにあって、本来互いに移りかわれるものであったのである。

その説明にはいる前に、まず「物質」と「勢力」という言葉の意味を知っておく必要がある。そのうちで、比較的わかり易い物質の方からはいろう。

物質といえば、ものであって、何も説明など要らないわかり切ったことと思われるかもしれない。しかしこれは案外厄介な問題なのである。人間の身体とか、茶碗とか、水とか、というものは、なるほど物であるから、これは物質にちがいない。しかしこれを物と感ずるのは、形が目に見え、またさわってみると硬かったり軟かかったり、とにかく手に触れるからである。

それならば、空気のように目にも見えず、さわってもみられないものは、物質でないかといえば、もちろんこれも物質である。水の場合がわかり易いが、温めて水蒸気にすると、これは全く空気と同じく、目にも見えず、又手にも触れないものになる。鉄瓶の口から出る湯気は白くて目に見えるが、あれは水蒸気ではなく、小さい水滴の集まりである。ところで水蒸気を冷やすとまたもとの水にかえる。水は物質であるから、それが水蒸気になっても、やはり物質と考うべきである。