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ぶっしんいちにょのかがく

物心一如の科学

中谷 宇吉郎

「禪文化 第七号」花園大学禪文化研究会、1957(昭和32)年3月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,786 字 · 20 页

青空文庫

冷やせばまた水という物質に戻るのであるから、途中だけ物質が消えては可怪しな話になる。

手に触れられないもので、やはり物質と考うべきものは、他にも沢山ある。例えば、月や太陽なども、これは物質であると、誰でも考えている。

月というものが天空に存在しているのである。芝居の書割に出て来る月、即ち幕に後から光で照らして作る月は、物質ではない。しかし本当の月はさわっては見られないが、物質である。電波を送ってやると、月から反射して戻って来る。

それでは、物質と物質でないものとを、何で区別するかというと、それはなかなかむつかしい。形や硬さで区別することの出来ないことは、水蒸気の例で既に説明ずみである。色などはもちろん判定要素にはならない。或る茶碗を赤い光で見れば赤に見えるが、青い光で見ると青く見える。しかし色などはどう変っても、茶碗には実質というべきものがあって、それは不変なものであると考える方が至当である。

この不変の実質が何であるか、さらに進んでは、そういう不変の実質というものが果して存在するか否かが、大いに問題である。

ところで科学も、結局は人間がつくったものであって、そういう一つの学問をつくり上げるには、何か基盤になるものが必要である。