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ぶつりがくのおうようについて

物理学の応用について

寺田 寅彦

「理学界 第十巻第九号」1913(大正2)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,232 字 · 7 页

青空文庫

物理学は基礎科学の一つであるからその応用の広いのは怪しむに足らぬ。生命とか精神とかいうものを除いたいわゆる物質を取扱って何事かしようという時にはすぐに物理学的の問題に逢着する。吾人が日常坐臥の間に行っている事でも細かに観察してみると、面白い物理学応用の実例はいくらでもある。ただそれらは習慣のためにほとんど常識的になっているので、それと気が付かないだけである。例えば台所における物理学の応用だけでも、一々列挙すれば一冊の書物が出来ようと思う。

純粋な科学の各種の方面でも物理学を応用しあるいは物理学の研究方法を転用する事が盛んになる。天文、気象、地質、海洋等に関する自然科学研究に物理学応用の発達して行くのはむしろ当然の事であろうが、普通の意味における物質とはよほど縁の遠い生理学や心理学にまでもだんだん応用が開けて行くようである。

工業における応用も事新しく述べるまでもない事である。ドイツの工業が著しい長足の進歩をしたのは、その基礎となるべき物理学、化学の研究に帰因するという事は識者の認めている所である。また医学の方でも物理的療法という言葉が出来て、その方の専門家もあるくらいである。