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とくしゅぶらくのはんざい

特殊部落の犯罪

豊島 与志雄

「新小説」1922(大正11)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,455 字 · 15 页

青空文庫

「おつる坊、お前幾歳かなあ?」

思わず声が、それでもゆっくりと出た。

「十六だよ。」

とんがった答えだった。

「うむ……十六けえ……。」

見据えた眼を輝かして、四五歩にじり寄っていった。

「何するだ!」

彼女はぎくりとして飛び退った。

「お前、俺が嬶になんねえか。」

喫驚した円い眼をくるりとさして、次に彼女は笑い出した。

「ははは、お前でも嬶貰うつもりかね。」

「俺愚図だが、これでなんだ、鰻や鼈ときたら、見つけたら最後逃したためしねえぞ。野田の旦那が日本一だちゅうてほめさっしたぞ。……俺お前が好きだあ。お前が来てくれるで、煩ったのが有難えと思ってるだ。……椿の実いどっさり取ってくれるだぞ。」

「こんな青っぺえなあ駄目だあ、皮がはじけた黒えんでなきゃあ。」

「うむ、はじけたやつけえ、いくらでも取ってくれるぞ。俺もう何ともねえだ。」

よぼよぼしてたのを、力籠めてすっくと立ち上った。執拗な眼付をじっと見据えて、手先をわなわな震わしたが、顔の下半分がだらりと弛んで髯もじゃの※(「臣+頁」、第4水準2-92-25)へたらりと涎が流れた。

つるはぞっと立ち竦んだ。煤けたランプの光りが真赤だった。