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いぬとひととはな
犬と人と花
小川 未明
「黒煙」1919(大正8)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,015 字 · 5 页
あるときのことです。村人は、畑から取れたものを持って、おじいさんの庭先へやってまいりました。
「おじいさん、これを食べてください。」といいました。
いつものごとく、にこにことして煙草を吸っていたおじいさんは、その日にかぎって、常よりは元気なく、
「もう、私は、なんにもいらないから。」と答えて、軽く頭を振りました。
村人は、どうしたことかと心配でなりませんでした。
その明くる日、おじいさんは気分が悪くなって床につくと、すやすやと眠るように死んでしまいました。いいおじいさんをなくして、村人は悲しみました。そうして、懇ろにおじいさんを葬って、みんなで法事を営みました。
「ほんとうに、だれからでも慕われた、徳のあるおじいさんだった。」と、人々はうわさをいたしました。
また、二十年たち、三十年たちました。おじいさんの墓のそばに植えた桜の木は、大きくなって、毎年のくる春には、いつも雪の降ったように花が咲いたのであります。
ある年の春の長閑な日のこと、花の下にあめ売りが屋台を下ろしていました。屋台に結んだ風船玉は空に漂い、また、立てた小旗が風に吹かれていました。そこへ五つ六つの子供が三、四人集まって、あめを買っていました。